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日本の皆様へ

ミャンマーよもやまばなし

2020年11月24日

第4回 ミャンマーにおける日本語教育の現状

Thu Thu Nwe Aye (トゥ トゥ ヌェ エー)大阪大学非常勤講師/OJEICアソシエイトコーディネーター

 近年ミャンマー人日本語学習者は急増しており、その増加率は世界的に見ても顕著である。2019年の国際交流基金のプレスリリースによると、国際交流基金が実施する、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し、認定する世界最大規模の日本語試験「日本語能力試験(JLPT)」の 2019 年の年間受験応募者数の増加率の顕著な国・地域としてミャンマーが挙げられており、前年に比べてその増加率は 80%と劇的に増加している。ミャンマーからのJLPT受験申込者数は、2016年の約13,000人から2018年には約37,000人へと大幅に増加し、ミャンマーが全世界の国別受験申込者数では5位、東南アジアでは2位となっている。また、ミャンマー人留学生数については、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)留学生調査の結果によると、2014年から2019年の倍率は2.76倍で増えている。
 ミャンマー人日本語学習者が大幅に増加している背景には何があるのだろうか。2011年の新政権発足後、ミャンマーは「アジアの最後のフロンティア」と呼ばれ、注目されるにようになり、同国に進出する日本企業の増加により日本関係の就職機会が増えているのもミャンマー人日本語学習者増加の大きな理由だと言えるだろう。また、日本語学習者が増加する要因の1つとして、技能実習制度や特定技能制度の影響も考えられる。在留資格「特定技能」で日本に行くには日本語能力試験N4に合格する必要があるため、日本語を学習する若者が増えているようである。現に、2019年の国際交流基金のプレスリリースで、在留資格「特定技能」受入対象9か国での日本語能力試験N4レベル応募者の前年比増加率では、ミャンマーの増加率は117%で、2位にランクインしている。在留資格や来日する目的等は異なるが、ミャンマー人日本語学習者が急増しているということには変わりないのである。


ヤンゴン外国語大学の教員及び学生の大阪大学訪問(2018年国際交流基金研修プログラム) 於大阪大学箕面キャンパス

 ミャンマー人日本語学習者の増加に伴い、ミャンマーにおける日本語教育機関や日本語教師数も著しく増加している。国際交流基金のプレスリリースによると、日本語教育機関数は2015年に132だったのが2018年には400まで増加しており、3年間で約2倍に増加している。ミャンマーで日本語を専攻とする日本語学科がある大学はヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学のみであり、両大学とも国立大学である(2020年8月時点)。両大学では日本語専攻の学士課程に加え、修士課程が設置されている。さらに、大学卒業以上を対象とする専門課程(ディプロマコース)と高校卒業以上を対象とする夜間部(サティフィケートコース)がある。国際交流基金のサイトによると、ミャンマーでは、外国語大学は医科大学、工科大学、歯科大学に次いで入学に際して高い得点が必要とされており、中でも、日本語学科は英語学科と並んで人気が高いようである。最近一部の大学では、選択科目として日本語が学べるようになってきている。
 民間の教育機関として私立の日本語学校が急増しているが、中には日本国内の日本語学校との提携校等も出てきている。仏教の国ミャンマーならではの特徴とも言えるのが僧院でもボランティアによる日本語教室が開かれていることである。また、技能実習生や特定技能の送り出し機関による日本語教室もヤンゴンを中心に増えている。


大阪大学とヤンゴン大学の教員による学生交流プログラムの打ち合わせ(2017年) 於ヤンゴン大学

 2019年には国際交流基金ヤンゴン日本文化センターが開設され、ヤンゴン外国語大学で日本語教師育成講座も開講されるようになった。また、文部科学省の日本留学海外拠点連携推進事業の委託で2015年に岡山大学日本留学情報センター(OJEIC)のヤンゴン事務所が開設され、留学コーディネーターによる留学相談や留学フェア等の活動が行われている。元日本留学生協会(MAJA)はミャンマーの日本語教育に関する様々なイベント等に関わり、支援している。
 日本語教育関連イベントとしては毎年、日本語スピーチコンテスト、日本文学翻訳コンテスト、日本留学試験(EJU)、日本語能力試験(JLPT)、Top-J試験等が行われている。また、日本留学セミナーや留学フェアも定期的に開催されている。最近では、日本企業による就職フェアやミャンマー人向けのジョブフェア等も開催されるようになり、日本語関係の雇用機会も増え、日本語学習熱がさらに高まっている。ミャンマー国内のみならず日本においてもミャンマー人日本語学習者が急増している昨今、両国の大学間の連携や交流も増えてきている。今後ますますミャンマー人日本語学習者が増加し、日本とミャンマーの架け橋となる人材が多く育ち、両国の友好や交流のさらなる発展が期待される。


大阪大学の教員とヤンゴン外国語大学日本語専攻学生の交流(2017年) 於ヤンゴン外国語大学

【参考URL】

  • 国際交流基金プレスリリース(2019)「【ご報告】日本語試験「日本語能力試験(JLPT)」2019年の年間受験応募者数は過去最多の136万6020人~海外受験者数は対前年比15%増、東南・南アジア地域の伸び顕著~」 (2020年8月26日最終観覧)

  • 国際交流基金プレスリリース(2019)「【ご報告】過去最多142の国・地域で日本語教育2018年度「海外日本語教育機関調査」結果(速報)日本語教育機関数、教師数、学習者数 いずれも増加」 (2020年8月26日最終観覧)

  • 国際交流基金 (2019)「日本語教育 国・地域別情報 ミャンマー」 (2020年8月26日最終観覧)

  • 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) (2019)「 2019(令和元)年度外国人留学生在籍状況調査結果」 (2020年8月26日最終観覧)

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